妊娠が発覚すると赤ちゃんの健康状態の心配だと思います。ヒロクリニックNIPTでは全常染色体全領域部分欠失・重複疾患についても検査が可能。今回は5つの栄養素、たんぱく質、葉酸、鉄分、カルシウム、食物繊維について解説。
この記事のまとめ
赤ちゃんの栄養はお母さんが食べたものが消化、吸収、分解され、胎盤、臍帯を通って赤ちゃんに伝わっていくのでお母さんの栄養が重要です。妊娠期に必要な栄養素としてたんぱく質、葉酸、鉄分、カルシウム、食物繊維の5つが挙げられます。
はじめに
妊娠が発覚すると妊婦さんは様々なことが気になり、心配になってくると思います。
その多くが赤ちゃんの健康状態の心配だと思います。
赤ちゃんが健康に育っていくためには「妊娠中の栄養」が重要となってきます。赤ちゃんの栄養はお母さんが食べたものが消化、吸収、分解され、胎盤、臍帯を通って赤ちゃんに伝わっていきます。米粒より小さかった赤ちゃんが3000g近くまでお母さんのお腹で大きくなりますので、お母さんの栄養が重要なのは明らかです。生命の素晴らしさを感じますね。
多くの妊婦さんは赤ちゃんのためにはどんなものを食べたら良いか、注意しなければいけない栄養素は何か、体重の管理はどうしたらよいか、などの疑問が出てくると思います。
今回は妊娠中に重要となってくる5つの栄養素、たんぱく質、葉酸、鉄分、カルシウム、食物繊維について解説していきます。
ただし妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの妊娠後に何らかの診断をされた妊婦さん、非妊娠時のBMIが25以上の妊婦さん、非妊娠時より疾患をもっている妊婦さんにつきましては担当医師指示の元、食事コントロールが必要になってきますのでご注意ください。
バランスの良い食事を摂取し、快適で安全なマタニティライフを過ごしていきましょう。
妊娠期に必要なエネルギー量とは?
成人女性のエネルギー所要量はおよそ1900kcal/日と言われており、 妊娠期のカロリー摂取量は妊娠期に応じて少しずつ増えていきます。
- 妊娠初期 +50kcal
- 妊娠中期 +250kcal
- 妊娠後期 +450kcal
妊娠初期にはつわりの影響で食事が食べられなくなってしまったり、もしくは食べづわりでカロリー摂取量が増えてしまうことがあると思います。また妊娠後期では大きくなるお腹の影響ですぐにお腹がいっぱいになってしまって一回の食事量が減ってしまうことがあります。一回量が摂取できないようであれば食事を細かく分ける分食をしてみると良いでしょう。
上記はあくまで目安ですので体重の増加量などをチェックしながら、バランスの良い食事を心がけるようにしましょう。
赤ちゃんのためにと食事を摂りすぎてしまうことは注意が必要です。体重が増えすぎてしまうと妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、巨大児、肩甲難産などの様々なリスクが生じてきてしまいます。しかし妊娠中は体重が増えすぎてしまったからといて食事量を減らすようなダイエットをすることは良くありません。体重増加が気になる時には無理のない範囲でウォーキングなどの有酸素運動をするようにしましょう。
非妊娠期のBMIで体重増加量の範囲が変わってきます。
- BMI18.5未満 9~12kg
- BMI18.5以上25.0未満 7~12kg
- BMI25.0以上 個別相談
※ BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
妊娠期に重要な栄養素とは?
たんぱく質
一日に必要なたんぱく質は摂取エネルギーの13~20%が理想とされており、成人女性は50g/日が推進量となっています。しかし 妊娠中は、妊娠初期は+0g、妊娠中期では+10g、妊娠後期では+25gを追加することが推進されています。
たんぱく質は筋肉や臓器など身体を造るために非常に重要な栄養素です。また酵素やホルモン、免疫物質を合成するための役割も担っています。
たんぱく質を多く含む食材(100gあたり)
牛肉(もも肉) |
20.7g |
豚肉(もも肉) |
22.1g |
鶏肉(むね肉) |
24.4g |
鮭 |
22.3g |
かつお |
25g |
牛乳 |
3.3g |
ヨーグルト |
3.5g |
豆乳 |
3.6g |
木綿豆腐 |
6.6g |
卵 |
12.3g |
葉酸
妊娠中、特に重要と言われている栄養素の一つに葉酸があります。葉酸は水溶性のビタミンB群の一つです。妊娠前、妊娠中に葉酸を摂取することで赤ちゃんの先天性疾患の神経閉鎖障害や無脳症の発症を防ぐことができます。また葉酸は赤血球の生産を助けるビタミンでもあり、たんぱく質の生合成を促進し、細胞の生産、再生を助ける重要なビタミンの一つです。よって赤ちゃんの成長には欠かせない栄養成分になります。
葉酸は成人女性では240μg/日、妊娠を希望する女性、妊婦さんは480μg/日が推進されています。
葉酸は植物の葉に多く含まれるビタミンで光や熱に不安定な物質であり、食事から身体に吸収される率にはばらつきがあります。すべて食事から480μgの葉酸を摂取することは極めて難しく、サプリメントも併用して摂取することがよいと言われています。
葉酸を多く含む食材
ほうれん草(60g) |
126μg |
アスパラガス(60g) |
114μg |
春菊(60g) |
114μg |
いちご(60g) |
60μg |
納豆(50g) |
60μg |
熱や光、水に弱い葉酸は蒸したり炒めるなど、調理方法も工夫するとよいでしょう。
鉄分
妊娠中に多くの妊婦さんが悩まされるトラブルの一つに鉄欠乏性貧血があります。非妊娠女性でも4人に1人が鉄欠乏性貧血と言われています。妊娠中は赤ちゃんに栄養を送るために全身の血液量が1.5倍程度増えるため普段問題ない女性でも貧血になりやすい傾向にあります。
鉄欠乏性貧血とは、赤血球の成分のヘモグロビンを造るために必要な鉄分が不足することで起こります。ヘモグロビンは血液中で酸素を運ぶ役割を担っており、鉄分が不足すると体を動かしたときに息切れや動悸、頭痛、めまい、立ちくらみ、疲れやすくなったりします。軽度の場合赤ちゃんにはほとんど影響はありませんが、高度な鉄欠乏性貧血では赤ちゃんが低体重になったりすることがあるので注意が必要です。
成人女性では10~12mg/日の鉄分が推進されており、妊娠初期では+2.5mg/日、妊娠中期、後期では+15mg/日の追加が推進量となります。
鉄分を多く含む食材
豚レバー(80g)※ |
10.4㎎ |
鶏レバー(60g)※ |
5.4㎎ |
わかさぎ(80g) |
4.0㎎ |
カキ(70g) |
2.5㎎ |
干しひじき(10g) |
5.5㎎ |
ほうれん草(80g) |
3.0㎎ |
シジミ(20g) |
2.0㎎ |
高野豆腐(30g) |
2.8㎎ |
※レバーにはビタミンAが多く含まれるため摂りすぎには注意が必要です。
カルシウム
日本人に不足しがちなミネラルの一つと言われているのがカルシウムです。成人女性は650mg/日が推進量とされていますが、平均摂取量が420㎎/日と言われています。妊娠中の追加でのカルシウム摂取推進はありませんが、普段から不足しがちな方は妊娠中は特に気を付けて摂取することが大切です。カルシウムは赤ちゃんの骨と歯を形成するために重要な栄養素となります。
カルシウムを多く含む食材
牛乳(200ml) |
220mg |
プロセスチーズ(1個25g) |
158mg |
ヨーグルト(100g) |
120㎎ |
木綿豆腐(100g) |
86mg |
納豆(1パック50g) |
45㎎ |
干しエビ(3g) |
213㎎ |
あゆ(1尾70g) |
175㎎ |
モロヘイヤ(100g) |
260㎎ |
小松菜(100g) |
170㎎ |
食物繊維
食物繊維は人間の身体では消化ができない食べ物です。よってエネルギー源にはなりませんが、食後の血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを排出したり、水分を吸収し便の体積を増やす作用があります。
妊娠中は便秘になりがちですので食物繊維は積極的に摂ると良いでしょう。成人女性は18g/日以上が推進されています。妊娠中の追加推進はありません。
食物繊維を多く含む食材(100gあたり)
ひじき |
51.8g |
大豆 |
17.9g |
おから |
11.5g |
アーモンド |
10.1g |
キウイフルーツ |
2.5g |
アボカド |
5.3g |
ブロッコリー |
4.4g |
グリンピース |
7.7g |
妊娠中に注意が必要な食べ物とは?
妊娠するとホルモンの影響により消化機能が低下すると言われています。
ですので、胃もたれを起こしやすくなったり、便秘、下痢などを起こしたり、魚介類や生肉などからの細菌感染を起こしやすい状態にあります。時には赤ちゃんの先天性疾患を引き起こしてしまう場合もありますので、妊娠中の食べ物は特に注意が必要です。
食事が原因で赤ちゃんに染色体の異常が出ることはある?
ヒロクリニックNIPTでは、お母さんから採血しPCR検査をすることにより、胎児のダウン症といった染色体異常を調べる検査である、NIPT(新型出生前診断)を行っています。NIPT(新型出生前診断)は従来の血液による出生前診断と比較しても、感度・特異度から見ると検査自体の精度がきわめて高くなっています。NIPT(新型出生前診断)だけでは心配な妊婦さんには全染色体検査※も行っています。
※全染色体検査…21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー以外の染色体も含めた「全染色体」(1番~22番、X, Y染色体)と「全常染色体全領域部分欠失・重複疾患」についても検査が可能
染色体異常は妊娠後の食事から引き起こされることはありませんが、赤ちゃんの状態が心配なお母さんにとって、不安を解消するためにこの検査は有効だといえるでしょう。
ビタミンAに注意
ビタミンAは皮膚、目、粘膜の機能を正常に保つために必要なビタミンです。妊婦さんにとって重要な栄養素の一つですが、過剰摂取には注意が必要です。ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、体内の肝臓や脂肪組織の中に蓄積されます。妊娠3か月までにビタミンAを多く摂取してしまった場合、赤ちゃんの耳の形態異常が増えるといわれています。通常の食事のみで過剰摂取になる可能性は低いのですが、ビタミンAを含むサプリメントを飲んでいた場合は注意が必要です。成人女性の必要量は600μgRAE/日で上限は1500μgRAE/日です。妊娠後期では+80μgRAEすることが推進されています。過剰摂取は注意が必要ですが、少なすぎても赤ちゃんの発育不全を起こすといわれています。混乱する妊婦さんも多いと思いますが、サプリメントには注意しバランスの良い食事をすると良いでしょう。
レバーにはビタミンAを多く含みます。食べ過ぎてしまうことは注意が必要ですが、過剰でなければ問題ありません。
生物には注意
妊娠中はホルモンの影響で消化機能や免疫機能が低下しやすくなります。生魚や生肉、加熱殺菌されていない乳製品は食べない方が良いでしょう。
生魚、貝類ではアニサキス、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、A型肝炎ウイルスが起こることがあります、重症化してしまった場合、妊婦さんは敗血症や髄膜炎を起こし、赤ちゃんの死産、早産、先天性異常などを引き起こしてしまう恐れがあります。
生肉からはトキソプラズマ感染することがあります。トキソプラズマに感染すると流産、死産、もしくは先天性トキソプラズマ症となり目や脳に障害が生じてしまうことがあります。
ナチュラルチーズや生ハム、スモークサーモン、肉、魚のパテなどではリステリア菌に感染する可能性があります。妊娠26週以降では重症化しやすく、胎盤を通じて赤ちゃんへ感染し、早産、死産の恐れがあるといわれています。
水銀摂取に注意
魚の種類によっては、水銀摂取量に注意しなければならない種類があります(イルカ、クジラ、ミナミマグロなど)自然界にある量の水銀の量であれば通常の成人であれば体外へ排出できますが、胎児では水銀を外に出すことが出来ません。水銀が貯蓄してしまった赤ちゃんは、1000分の1秒以下のレベルで音への反応が遅れるといった影響が出ると言われています。
おわりに
今回は妊娠期の栄養と注意点について解説しました。
お母さんが安全なものを美味しく、正しく食べることは赤ちゃんにとって何よりも重要なことです。正しい知識を得て、よりよいマタニティライフを過ごしていきましょう。
栄養面に心配がある妊婦さんは担当医師と相談してサプリメントもうまく活用するとよいでしょう。
妊娠が発覚すると赤ちゃんの健康状態の心配だと思います。ヒロクリニックNIPTでは全常染色体全領域部分欠失・重複疾患についても検査が可能。今回は5つの栄養素、たんぱく質、葉酸、鉄分、カルシウム、食物繊維について解説。
記事の監修者
白男川 邦彦先生
ヒロクリニック名古屋駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医
産婦人科専門医として40年近くにわたる豊富な経験を持ち、多くの妊婦さんとかかわる。
現在はヒロクリニック名古屋駅前院の院長としてNIPTの検査担当医を行う一方、全国のヒロクリニック各院からのオンラインで妊婦さんの相談にも乗っている。
経歴
1982年 愛知医科大学付属病院
1987年 鹿児島大学附属病院 産婦人科
1993年 白男川クリニック 院長
2011年 かば記念病院
2019年 岡本石井病院
2020年 ヒロクリニック名古屋駅前院 院長